相続放棄の事前準備について
1 法定単純承認事由に該当する行為
相続放棄は、法律上、はじめから相続人ではなくなる手続きですので、被相続人の財産を一切取得することができない代わりに、負債も一切負わずに済みます。
相続放棄をする場合は、行ってはならない行為があります。
これを法定単純承認事由に該当する行為といい、行ってしまうと相続放棄が認められなくなる可能性があります。
法定単純承認事由に該当する行為の代表的なものとして、相続財産の処分があり、具体的には売却や廃棄、費消がこれにあたります。
相続財産である建物の取壊し、自動車の廃車手続きのほか、預貯金、現金を使用することはできません(一部例外があります)。
2 相続財産の管理責任
一方で、相続放棄をした元相続人には、次の相続人または相続財産管理人に相続財産を引き渡すまでの間、滅失等をしてしまわないように管理する責任が生じます。
相続放棄をする場合、相続財産を処分することはできないにもかかわらず、管理責任を負うことになります。
つまり、相続財産管理人選任申立てをして、相続財産管理人に相続財産を引き渡すまでは、管理をし続けなければならないということになります。
相続財産の中に、老朽化した建物や古い自動車がある場合、近隣に被害を加える可能性もあることから、補修などを続けなければならなくなります。
3 事前の準備
このような状況になることを防ぎ、相続放棄を円滑に進めるためには、可能な限り、被相続人となる方がお亡くなりになる前に、本人の承諾を得て財産の整理、処分をしておくことが有効です。
日ごろから被相続人となる方とお話をされていて、借金等の存在があることを聞かされていたり、被相続人となる方に相続放棄をするよう言われている場合には、準備を進めることができます(被相続人となる方と疎遠で、全くコンタクトが取れない場合は致し方ありません)。
特に、使っていない建物と自動車がある場合は、ご存命のうちに処分をしてしまった方が、相続放棄を円滑に進めることができます。