相続放棄を選ぶケース
1 相続放棄の効果
相続放棄は、初めから相続人ではなかったことになるという法的効果を有する手続きです。
(これに対し、遺産分割協議で一切財産を取得しない場合、一般的には「事実上の相続放棄」と呼ばれることもありますが、相続人としての地位を失うわけではありません。)
相続財産に関しては、(次の相続人へ引き渡す管理責任を除き)完全に無関係な存在となります。
根本的に相続人ではなくなる以上、相続財産に属する財産を一切取得することができない代わりに、相続債務も一切負うことはありません。
2 相続放棄をした方がよいケース
あまり知られていないことですが、相続放棄をする理由は、特に限定はされていません
もっとも、実際に相続放棄をする理由は、大きく次の2つです。
⑴ 被相続人に多額の借金があり、かつめぼしい財産がない場合
経済的な観点から、相続できる財産の価値よりも、相続で負うことになる負債の方が大きい場合、相続放棄をした方が得です。
実際には、被相続人の借金の額や債権者の数が明確ではなく、どこにどれだけの借金が潜んでいるかがわからないという場合に相続放棄を選択するということが多いです。
あらかじめ相続放棄をしておけば、将来被相続人の債権者を名乗る者が現れ、返済を求めてきたとしても、支払いに応じる必要はないので安心です。
⑵ 相続に関わりたくない場合
両親が離婚等をしたことにより、数十年前に片方の親と離別したっきり没交渉になっているというケースが、よくあります。
そして、市役所や債権者からの通知により、被相続人が死亡したことを知ることがあります。
市役所から連絡が来るのは、多くの場合、被相続人が生活保護を受給していたか、税金等の未払いがあるという場合です。
生活保護受給であった場合、通常はめぼしい財産を有しているということはありません。
税金等の未払いがある場合は、税金等を支払えない経済的状態であったということです。
被相続人の債権者からの連絡で被相続人の死亡を知った場合、仮に調査したとしても、プラスの財産が発見されることは期待できません。
返済が困難になっていた可能性が高いためです。
このような場合、被相続人の財産状況を調べることは非常に大変ですし、被相続人が遠く離れた場所にいた場合、現地に行くことすら大変な労力を要します。
そこで、相続放棄をして、相続関係から離脱するという選択をします。