相続放棄の方法
1 相続放棄の唯一の方法は,家庭裁判所へ書類を提出すること 2 「遺産はいらない」と口頭で伝えても,相続放棄したことにはならない 3 「遺産はいらない」という書面に押印しても,相続放棄したことにはならない 4 相続分の放棄をしても,相続放棄したことにはならない 5 法律上の相続放棄の方法をとらなかった場合,借金は背負うことになります
1 相続放棄の唯一の方法は,家庭裁判所へ書類を提出すること
相続放棄の方式は,法律で厳格に定められており,家庭裁判所に相続放棄を行うための書類を提出する以外の方法はありません。
2 「遺産はいらない」と口頭で伝えても,相続放棄したことにはならない
ご家族の間で,遺産の分け方について話し合い,たとえば,長男が全ての遺産を取得することになり,二男は遺産を受け継がないということになったとします。
この場合,二男は長男に対し,「遺産はいらない」と伝えているため,相続放棄をしたかのようにも見えますが,これは法律上定められた相続放棄の方法をとっていないため,相続放棄とは認められません。
3 「遺産はいらない」という書面に押印しても,相続放棄したことにはならない
仮に,相続人が長男と二男で,二男が「遺産はいらない」という書面に押印すれば,書類上は二男が遺産を受け継がない意思が明確になり,二男が相続放棄をしたようにも見えます。
しかし,このような書面を作成したとしても,法律上定められた相続放棄の方法ではないため,相続放棄とは認められません。
4 相続分の放棄をしても,相続放棄したことにはならない
相続の場面では,相続分の放棄という制度が存在します。
相続分の放棄とは,プラスの遺産についての権利を放棄するという意思表示です。
名前は似ていますが,相続放棄と相続分の放棄は,全く異なる制度です。
相続分の放棄も,法律上定められた相続放棄の方法ではないため,相続分の放棄をしても,相続放棄をしたことにはなりません。
5 法律上の相続放棄の方法をとらなかった場合,借金は背負うことになります
仮に,長男が全ての遺産を受け継ぎ,二男が長男に対し「遺産はいらない」と口頭で伝えたり,「遺産はいらない」という書面に押印した場合,当然二男は預貯金や不動産などのプラスの財産を相続することはできません。
二男が相続分の放棄をした場合も同様に,プラスの財産を相続することはできません。
しかし,二男は,法律上定められた相続放棄の方法をとっていないため,借金については,受け継ぐことになります。
その結果,仮に亡くなった方に借金がある場合,プラスの財産を放棄した弟は,借金を支払う義務だけ相続することになります。